非嫡出子の相続に関する民法の規定に最高裁が違憲判断 その3

 前回に引き続き、非嫡出子の相続格差を定めた民法の規定を、平成7年の合憲判決を覆して違憲とした最高裁の判断理由について考えてみたいと思います。

 前回は、「婚姻、家族の形態が著しく多様化しており、これに伴い、婚姻、家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいることが指摘されている。」という判決理由について、内閣府の世論調査をご紹介して、本当に国民意識が変化しているのかを見てみましたが、今回は、国連の人権条約について見てみたいと思います。

 判決理由の「3 本件規定の憲法14条1項適合性について」では、「2 憲法14条1項適合性の判断基準について」中の「相続制度を定めるに当たっては・・・国民の意識等を離れてこれを定めることはできない」ことの中で、昭和22年民法改正以降の変遷について概観して判断が覆った理由を述べ、その中で最初に前述の国民意識の多様化について触れ、2番目には、

 「平成7年大法廷決定時点でこの差別が残されていた主要国のうち、ドイツにおいては1998年(平成10年)の「非嫡出子の相続法上の平等化に関する法律」により、フランスにおいては2001年(平成13年)の「生存配偶者及び姦出子の権利並びに相続法の諸規定の現代化に関する法律」により、嫡出子と嫡出でない子の相続分に関する差別がそれぞれ撤廃されるに至っている。」

とし、3番目に国連の人権条約について、次のように述べています。

 「我が国は、昭和54年に「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(昭和54年条約第7号)を、平成6年に「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号)をそれぞれ批准した。これらの条約には、児童が出生によっていかなる差別も受けない旨の規定が設けられている。」

 「我が国の嫡出でない子に関する上記各条約の履行状況等については、平成5年に自由権規約委員会が、包括的に嫡出でない子に関する差別的規定の削除を勧告し、その後上記各委員会が、具体的に本件規定を含む国籍、戸籍及び相続における差別的規定を問題にして、懸念の表明、法改正の勧告等を繰り返してきた。最近でも、平成22年に、児童の権利委員会が、本件規定の存在を懸念する旨の見解を改めて示している。」


 ここでは平成5年の自由権規約委員会の勧告を取り上げていますが、平成7年の最高裁判決では、この勧告については触れられていません。今回の判決理由でこの勧告が取り上げられたのは、その後も各委員会から執拗に同じ内容の勧告が出されているからでしょうか。平成21年の女子差別撤廃委員会の見解、また平成22年の児童の権利委員会の見解については、拙ブログ「非嫡出子の相続に関する民法の規定の合憲性 その3」で紹介させて頂きましたのでご参照頂ければと思います。

 こうした国連の各人権条約の委員会の問題や、委員会に対する様々な団体の動きについては、これまで拙ブログでも何度か取り上げてきましたので、ご覧頂ければと思います。

拙ブログ
国連の児童の権利委員会の勧告がすり替えられていた?
国連の人権条約と各地の条例
子どもの権利条例の問題点⑤
国連女子差別撤廃委員会の最終見解に対するフォローアップ
国連は夫婦別姓を求めているのか

 また、委員会の見解に対する履行義務については履行義務がないことが閣議決定されています。これについては下記の記事をご覧下さい。

拙ブログ
条約の批准と委員会見解(勧告)の履行義務

 判決理由で相続差別が撤廃されたと紹介されているドイツですが、児童の権利条約に批准する際には、条約に規定する権利に一定の制限をかけるべく解釈宣言をしています。

拙ブログ
児童の権利条約ができるまで④ -条約の審議過程-

 また、国連の条約ですが、全ての国が批准しているわけではなく、特にアメリカは女子差別撤廃条約と児童の権利条約には未だに批准していません。その理由が、児童の権利条約に家族の権利という基本的な概念が欠けていることや、家族的価値の再建であったことは重要ではないでしょうか。

拙ブログ
児童の権利条約に批准していない米国






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