国連女子差別撤廃委員会の最終見解に対するフォローアップ

 児童の権利条約や女子差別撤廃条約を始めとする国連の人権条約では、条約に基づいて設置された委員会に対して定期的に履行状況の報告を行い、委員会は報告を審査して見解を出すことについては、これまでもこのブログで取り上げてきました。

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条約の批准と委員会見解(勧告)の履行義務

子どもの権利条例の問題点⑤

 女子差別撤廃条約に関しては平成20年4月に女子差別撤廃委員会に対して第6回の報告を提出し、それに対して平成21年8月に委員会からの最終見解が出されていて、特定の勧告に対してはフォローアップを提出するように求められていましたが、今年8月に日本政府がフォローアップの報告を提出し、それに対して11月に女子差別撤廃委員会の見解が出されていますので、その内容について見てみたいと思います。第6回報告とそれに対する見解については、外務省のHPをご参照下さい。

 フォローアップについては、第6回報告に対する見解のパラグラフ18と28(※)についての報告になっていますが、パラ18については、

現行の第3次男女共同参画基本計画は、最終見解を踏まえて議論を進め、2010年12月に策定したものである。

2011年6月にはNGO等に対しても関係府省から取組内容の説明を行い、意見交換会を行った。


とした上で、非嫡出子の相続分に関する民放の規定について、平成21年9月に最高裁が法の下の平等を定める憲法第14条に違反しないとした判決について、

しかし、同決定において、4人中1人の裁判官は、当該規定は違憲であるとの反対意見を述べている。さらに、同決定の多数意見を構成した3人中1人の裁判官は、当該規定は少なくとも現時点においては違憲の疑いが極めて強いものであるとし、立法府が当該規定を改正することが強く望まれていると考えるとの補足意見を述べている。

として、わざわざ少数意見を紹介しています。また、民法及び戸籍法の一部を改正する法律案についてとして、

2010年1月、婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化等を内容とする民法及び戸籍法の一部を改正する法律案(仮称)を第174回国会(常会)内閣提出予定法律案とした。

としていますが、結局は国会には提出しなかったと説明しています。また、平成22年に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画については、同年7月の答申で、女子差別撤廃委員会の最終方針も踏まえて、民法改正が必要であると述べたことに触れ、第2次基本計画と比較した上で、

第3次基本計画では、「夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正について、引き続き検討を進める。」とした。

と報告しています。

パラ28については、第3次基本計画の策定と暫定的特別措置の取組強化についてとして、

第3次基本計画では、実効性のある積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の推進を挙げ、各重点分野において、期限と数値を定めたゴール・アンド・タイムテーブル方式のポジティブ・アクションを導入した。

として、政治分野、行政分野、雇用分野、学術分野において、更にはあらゆるレベルでの女性の参画の拡大についての取組を説明しています。

 こうした日本政府のフォローアップに対して、女子差別撤廃委員会からの見解は、

委員会は、パラグラフ28の勧告の履行を歓迎するとともに、日本政府に対し、次回の定期報告に第3次男女共同参画基本計画の成果について詳細な情報を盛り込むことを勧告する。また委員会はその成果を踏まえ、日本政府がジェンダー平等実現のためにとった追加的措置を示すことを勧告する。

委員会は民法及び戸籍法の差別的規定に関するパラグラフ18の勧告について、一部履行されたものと判断する。民法及び戸籍法の一部を改正する法律案(仮称)は婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化を内容とする一方、女性のみに課せられている6か月の再婚禁止期間の廃止を規定しておらず、内閣でまだ採択されていない。

それゆえ、委員会は日本政府に対し、1年以内に以下の追加的情報を提供するよう、勧告する。
a)男女共に婚姻適齢を18歳に設定すること、女子差別撤廃条約16条1(g)の規定に沿って夫婦に氏の選択を認めること、嫡出である子と嫡出でない子の相続分を同等化することを内容とする民法改正法案の採択について講じた措置
b)女性のみに課せられている6か月の再婚禁止期間を廃止する法律規定の準備及び採択について講じた措置


というものでした。

 このフォローアップに関しては、委員会に対する報告の場合と同じように、NGOからのカウンターレポートも提出されているようで、日本女性差別撤廃条約NGOネットワークからもレポートが提出されたようなので、政府のフォローアップ報告と読み比べてみて頂ければと思います。同レポートでは、前置きの部分で、

2つのフォローアップ項目は、まことに適切なもので、いままさに日本が取り組まなければならないことであり、(中略)。しかし残念ながら、いずれも実行されてはおりません。

フォローアップ報告書の策定に当たって、NGOとの意見交換はほとんど行われませんでした。

日本の現状を熟知しておられるシモノヴィッチ特別報告者をはじめCEDAW委員の皆様のご賢察と日本へのさらなるご示唆を期待しております。


と、日本政府の無策を告発して、国連の委員会の更なる見解を求めていますし、資料の中でも、

国際評価の順位は日本の状況を正確には反映していない。保健・衛生や教育などが指標になると日本の順位は上がるが、女性の雇用環境や政治参加が指標に入ると日本の順位は下がる。

として、国際評価も我が国に対して甘いとするなどの内容となっています。

 しかしながら、今回のフォローアップについて女子差別撤廃委員会は、パラ28については履行されていると判断し、パラ18についても一部履行されていると判断していますので、概ね我が国の取組が評価されたと見て良いと思うのですが、週間金曜日の金曜アンテナによれば、

 審査結果が厳しいものとならなかったのは、日本政府が期限内に詳細な報告をしたことや差別撤廃に向けて積極的な姿勢を示した第3次男女共同参画基本計画の策定が評価されたものと思われる。
 しかし、実際には民法改正の動きはほとんどなく、ポジティブ・アクションについても数値目標を掲げたものの、政府に積極的な動きが見られないため、この評価を疑問視する声もある。


なのだそうです。


※パラグラフ18と28

18. 委員会は、男女共に婚姻適齢を18歳に設定すること、女性のみに課せられている6カ月の再婚禁止期間を廃止すること、及び選択的夫婦別氏制度を採用することを内容とする民法改正のために早急な対策を講じるよう締約国に要請する。さらに、嫡出でない子とその母親に対する民法及び戸籍法の差別的規定を撤廃するよう締約国に要請する。委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依存するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべきであることを指摘する。

28. 委員会は、本条約第4条1及び委員会の一般勧告第25号に従って、学界の女性を含め、女性の雇用及び政治的・公的活動への女性の参画に関する分野に重点を置き、かつあらゆるレベルでの意思決定過程への女性の参画を拡大するための数値目標とスケジュールを設定した暫定的特別措置を導入するよう締約国に要請する。


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