児童の権利条約ができるまで③ -オートノミーの権利-

東北関東大震災で罹災された皆様には心からお見舞いを申し上げます。

 陛下も計画停電にあわせて御所での電力使用を停止されていらっしゃるとのことですから、被災地に出向いてのお手伝いが出来なくても、今できることを一つでもしていきたいと思います。節電、必要以上のものは買わない、義援金、我が家もこうしたことから始めています。書き留めたものもありますので、このブログも少しずつ再開していきたいと思います。

+++日本赤十字社 東北関東大震災義援金+++
http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002069.html

 前回、パレンス・パトリエによるパターナリズムが、自然の親子関係や家庭がきちんと存在していたことを基底に、そこから放り出された子どもたちを補完的に保護する役割を果たしたことを見てきましたが、保護を受ける権利からオートノミーの権利へ逆流していく背景には、1960年代以降米国で更なる家族の崩壊が起こったことに要因があるようです。

 この60年代から70年代の動きについて森田氏は

「(ⅰ)公民権運動とともに隆起した新平等主義・個人主義の下でのパターナリズム批判が、(ⅱ)社会の基底でパレンス・パトリエを支えてきた「家族」の急激な崩壊現象と複合することによって登場した」

と解説しています。この頃の米国の社会状況は、

「60年代半ばには明らかになった新しいタイプの『児童虐待』の増大、性の自由化と女性の社会進出、離婚と非嫡出子の急増等々に見られる〈家族の崩壊〉の進展」

「70年代中期を過ぎる頃には、アメリカ社会における児童虐待・遺棄の件数は推定で総計100万件、非嫡出子の出生率が全出生児の16%に昇り、1年間に結婚した夫婦の『3分の2か少なくとも2分の1は……大半は3年以内に別れるであろう』」

というような状態で、パレンス・パトリエを支えてきた家族関係・親子関係が社会全体で崩れ始めたことを指摘し、法学的にも、

「『連邦憲法修正14条および権利の章典が成人専用の規定でないことは疑問の余地無く明らかである』というゴールト判決(1967年)やティンカー判決(1969年)が掲げたデュープロセスと個人的自由、なかんずくパレンス・パトリエ批判の論理は、こうして70年代の新たなChildren's Right Movementに法学的な切り札を提供した。」

「『憲法上の自由権の規定は大人専用のものではない。子どもも大人と同じ人権とオートノミーの主体である』という両判決の基本メッセージは、70年代に大きく展開する『子どもの権利運動』が絶えず掲げ続ける旗印となった。」

として、パレンス・パトリエからオートノミーに転換していったことを解説されています。そして、デュープロセスとオートノミーの権利の理念が米国内に拡がっていったことについて、

「少年裁判所は一路“19世紀的な刑事司法的アプローチへ回帰する道”を歩み始めた。(中略)パレンス・パトリエ少年裁判所の花形だったしつけを必要とする非犯罪少年の保護管轄は多くの州で廃止された。(中略)『自律・責任から保護へ』の流れは、『保護からオートノミーへ』の逆流へと転じたのである。」

『子どものオートノミー・自己決定』という鍵概念は、第一義的には親のparental authority批判から発した、パターナリズム一般に対する批判のイデオロギーなのである。かくして、世紀初頭の〈自律から保護へ〉の流れは、〈保護から自律へ〉の逆流に転じた。(中略)何よりも大きく陥没したのが、自然の親のparenthoodとauthorityであったことは、60年代末から80年代にかけて加速度的に進行した〈家族の崩壊〉を示す様々のデータとインデックスが雄弁に物語っている。」

と論じています。

 つまり、20世紀前半に子どもを保護するというパターナリズムが登場したものの、20世紀後半になると、パレンス・パトリエでは補いきれない急激な家族の崩壊が進展し、そうした中でパターナリズムが批判されるとともに、新平等主義・個人主義の社会情勢の中で、子どもにも大人と同じデュープロセスやオートノミーの権利があるとする考え方が拡がっていったということです。

 どうして20世紀後半にパレンス・パトリエの理念を超えるような急激な家族の崩壊が社会現象となっておきたのかについては、調べてみなければわかりませんが、米国国内でのこうした流れは、1978年から始まった児童の権利に関する条約の審議にも大きな影響を与えたようです。次回は児童の権利条約の審議過程について見てみたいと思います。

※参考文献
 「未成年者保護法と現代社会-保護と自律のあいだ-」
  著者:森田明、発行:有斐閣



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