国連の人権条約と各地の条例

 子どもの権利条例や男女共同参画条例を取り上げる中で、国連の児童の権利条約(児童の権利に関する条約)や女子差別撤廃条約(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)との関係をご紹介しましたが、国連の人権条約と各地の条例との関係について整理してみたいと思います。

 拙ブログで取り上げている各地の条例は、男女共同参画条例、子どもの権利条例、自治基本条例ですが、男女共同参画条例は、国の男女共同参画社会基本法に基づき、更に国の男女共同参画社会基本法は国連の女子差別撤廃条約に基づいて制定されています(ただし、基本法で規定されているのは条例の制定ではなく計画の策定ですが)。また、子どもの権利条例については、国は批准にあたって特別な立法措置や予算措置は必要ないという立場を取っています(拙ブログ「児童の権利に関する条約」参照)が、国の頭越しに地方で条例が制定されています。そして、自治基本条例については、国連の条約とは関係なく、自治労などが中心となって推進していて、民主党の地域主権や市民自治という考え方と繋がっています。

 これを整理してみますと、

 (国連)           (国)                (地方自治体)
 女子差別撤廃条約 - 男女共同参画社会基本法 - 男女共同参画条例
 児童の権利条約   - (なし)             - 子どもの権利条例
 (なし)         - (なし)             - 自治基本条例

となりますが、児童の権利条約に対する国の法律に関しては、昨年国連の児童の権利委員会が出した見解にも、「包括的な児童の権利法が存在しないことを引き続き懸念する」(パラ11)とあるように、男女共同参画社会基本法のような国の法律を作ることが求められていますし、子どもの権利条例推進派でも基本法を制定しようとする動きがあるようです。

 こうして見ますと、危ない条例が国連の人権条約と深く関係していることが見えてきますが、国連の人権条約は、これだけではありません。現在我が国が批准している国連の人権条約には(外務省HP参照)、

国際人権規約
  社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)
  自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)
  ※社会権規約を国際人権A規約、自由権規約を国際人権B規約とよぶこともあります。

女子差別撤廃条約(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)

児童の権利条約(児童の権利に関する条約)

人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)

拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約)

があります。また、批准していませんが、署名している条約には、

強制失踪条約(強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約)

障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)

があり、このうち、強制失踪条約については我が国は平成21年7月に批准しましたが、その段階では条約発効に必要な批准数20に達していなく、条約の効果はありませんでしたが、平成22年11月23日に批准数が20に達して、同年12月23日に発効しています。また障害者権利条約については、平成20年5月に発効していますが、我が国は署名のみで未だ批准には至っていません。

 しかし、障害者権利条約に批准してはいないものの、国内ではすでに千葉県で「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が堂本知事時代の平成18年に制定されています。当時の報道では、差別の定義があいまいで、被害者側が差別と受け止めれば差別と認定される恐れがあることなど、人権擁護法案で指摘されているような問題が指摘されていました。


◇千葉県で全国初の障害者条例が成立(産経新聞 平成18年10月11日)

 障害者差別の禁止をうたい、差別の定義や解決の手続きを全国で初めて盛り込んだ千葉県の障害者条例案が11日、県議会で可決、成立した。施行は来年7月1日。差別の定義にあいまいな面もあり、教育界や人権団体からは「健常者と障害者、障害者同士の対立を深めかねない」と、運用面での弊害を懸念する声も上がっている。
 条例の正式名は「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」。福祉や労働、教育、不動産取引など8分野について障害者差別に当たる行為を定めた。

 雇用に関しては「業務の本質的部分が不可能である場合や合理的理由がなく、採用を拒否できない」と規定。しかし条文の「本質的な部分」の解釈が明確ではないなど、障害者が差別されたと受け止めれば、認定される余地もあるとされる。

 条例では、障害者が差別を受けたと申し立てれば、第3者機関の調整委員会が当事者から意見を聴き、助言やあっせんを行う。罰則はないが、知事が勧告できるほか、障害者の訴訟費用を県が援助できるとしている。



 また、障害者の権利条約の批准に向け、或いは国内法の整備については、子どもの権利条例推進勢力が係わっていることも注意が必要です。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n306/n306009.html

 最後に、国連の条約の批准に対しての各国の対応ですが、拉致問題が重要課題である我が国にとっては必要な強制失踪条約に批准している国は少ないことや、また女子差別撤廃条約や児童の権利条約にアメリカが批准していないことを見ますと、それぞれの国が自国の国益を考えて批准していることがわかるのではないでしょうか。

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