米国が国連人権理事会を離脱

 米国が国連の人権理事会を離脱することを発表しました。離脱を決めた背景には、人権を抑圧している国が理事国になっていることや、そうした状況の改革に取り組んできたものの人権侵害国を排除できないことなどがあるようです。


◇米国が国連人権理事会を離脱、イスラエル批判や「人権侵害国」を理由に (産経新聞 平成30年6月20日)

 【ワシントン=加納宏幸】ヘイリー米国連大使は19日、国連人権理事会からの米国の離脱を国務省で記者団に発表した。ポンペオ国務長官も同席した。ヘイリー氏は47カ国の理事国に中国、キューバ、ベネズエラなど米国にとっての「人権侵害国」が含まれていることや、米国の同盟国イスラエルを批判する場として政治的に使われていることを離脱の理由に挙げた。

 人権理が本部を置くジュネーブで18日、通常会期が始まっており、在イスラエル米国大使館のエルサレム移転に抗議するパレスチナ自治区ガザでのデモで多数が死傷した問題も討議される見通しだ。

 ヘイリー氏は現在の人権理のあり方を「人権侵害国の保護者であり、政治的偏向の汚水だめだ」と批判した。また、トランプ政権として人権理の改革を追求してきたが、中国、キューバに加え、ロシアやエジプトが改革を妨害したとし、「(人権の)名前に値しない組織だ」と主張した。

 ポンペオ氏も「最も深刻な人権侵害国が理事国になっている」と非難した。

 トランプ政権は昨年10月、「反イスラエル」の傾向があるとして国連教育科学文化機関(ユネスコ)脱退を通告しており、国際機関に対する不信や、イスラエルとの同盟関係のためには単独行動も辞さない姿勢を明確にした形だ。人権理は2006年に設立され、日本、韓国、ロシアも理事国に名を連ねる。

 米国はブッシュ(子)政権末期の3年間、「人権侵害国」が理事国になれることを問題視し、理事国選挙への立候補を見送っていたが、オバマ前政権が09年、復帰した。人権理では2月、韓国の康京和外相が演説で慰安婦問題への日本政府の努力が不十分との認識を示すなど、対日批判の場としても使われていた。


◇米、国連人権理離脱で中国など「偽善国」に抵抗 改革実らず、影響力低下も (産経新聞 平成30年6月20日)

 【ワシントン=加納宏幸】米政府が国連人権理事会からの離脱を表明したのは、各国の人権状況を軽視したからではなく、むしろ中国など人権を抑圧している国が理事国の地位を隠れみのに他国の人権を語る「恥知らずの偽善」(ポンペオ国務長官)にあらがうためだ。

 ヘイリー米国連大使は19日、離脱で「人権への関与を後退させるのではなく、逆に関与するからこそ人権を踏みにじる偽善的で利己的な組織にとどまれなくなった」と説明した。人権侵害国が理事国の立場にあることで、「世界最悪の非人道的な体制が監視を逃れている」とも述べた。

 米国は1年越しで人権理の改革に取り組んできた。だが、人権侵害国を理事国から排除し、イスラエルのパレスチナに対する「人権侵害」に関する恒常的な議題を削除する主張は進まず、米国は設置以来初の離脱国になる道を選んだ。

 共和党はブッシュ(子)元政権から人権理のあり方を問題視してきた。設置当時、国連大使だったボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は人権侵害国の理事国入りを防ぐため「より高いハードル」を求めたが受け入れられず、同政権は理事国選挙への立候補を見送った。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、イラン核合意など国際的枠組みを離脱し、2国間交渉を志向するトランプ氏は人権侵害国に直接、改善を迫る方針だ。米朝首脳会談では日本人拉致問題を提起した。ただ、米国は中朝の人権問題を主導的に人権理に提起してきただけに、米国の影響力低下を危ぶむ声もある。



 報道にあります国連の人権理事会は、それまで設置されていた人権委員会を強化すべく、2006年3月の国連総会決議によって、総会下部機関としてジュネーブに設置されました。それまで人権問題を扱ってきた人権委員会は、1946年に女性の地位委員会と共に経済社会理事会に設置された委員会で、毎年6週間開催される非常設の委員会でしたが、人権理事会は年3回(10週間以上)開催される常設の機関となり、その立場も総会直接の下部機関となっています。人権委員会は、クマラスワミ報告やマクドゥーガル報告が出されたことでご存じの方もいらっしゃると思いますし、人権理事会となってからは、表現の自由特別報告者として来日したデイビット・ケイ氏でご記憶の方も多いのではないでしょうか。

 そうした国連の人権理事会を米国が離脱することを表明したのは、突然のことではないように思います。報道にもありますように、人権理事会設置当初も米国は加入していませんし、オバマ民主党政権の時に加入したものの、理事会のあり方には批判的だったようでBBCニュースによれば、人権理事会を「政治的偏向のはきだめ」と批判したようです。また、拙ブログでこれまで取り上げてきたように、米国は国連の女子差別撤廃条約にも児童の権利条約にも未だ批准していません。

 また、国連の人権理事会に、米国が指摘しているような人権を抑圧しているような国が理事国になっていたり、各人権条約も、この国がというような国が批准している場合もありますし、以前、拙ブログで児童の権利条約の成立過程を取り上げたことがありますが、条約自体も各国の様々な思惑が絡んで矛盾を抱えていることもあります。そうしたことを理解して、国連に関わっていく必要がありますし、国連を絶対視することなく、米国のように部分的に離脱することも必要なのではないでしょうか。

児童の権利条約ができるまで①
児童の権利条約ができるまで② -保護を受ける権利-
児童の権利条約ができるまで③ -オートノミーの権利-
児童の権利条約ができるまで④ -条約の審議過程-
児童の権利条約ができるまで⑤ -条約が抱える矛盾-


 

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