少子化対策を考える⑤ ー少子化論のパラダイム転換ー

 前回まで、松田茂樹氏の「少子化論」の中の家族は変わったか、そして未婚化についてみてきました。「少子化論」では、この後、父親の育児参加や企業の両立支援、或いは、都市と地方の少子化、国際比較からみる日本の少子化、などについて論じていますが、拙ブログでは、終章「少子化克服への道」について見てみたいと思います。

 松田氏は、第六章までの分析を踏まえて、わが国の少子化の主要因が未婚化であることを改めて示した上で、

 わが国が行ってきた少子化対策は保育などの子育て支援が中心であり、若者の経済的自立や結婚に対する支援はあまりなされてこなかった。その一因は少子化の主要因が未婚化にあり、その対策が必要であるということが十分認識されてこなかったことにある。

として、少子化対策は子育て支援という従来の認識では少子化は解決できないと指摘しています。さらに、仕事と子育ての両立が難しくて結婚や出産をしない女性はおよそ2割であることを示して、

 マスを占める残り八割の女性は、子どもが小さいうちは育児に専念することを望む者であるため、仕事と子育ての両立の問題によって未婚化が進んでいるのではない。未婚化の主要因は、若年層において非正規雇用者が増え、正規雇用者も以前よりも収入が低下したこと―雇用の劣化―である。

と指摘されています。また、結婚後の家族の支援については、

 子育て期をみると、現在も「夫は仕事、妻は家庭という性別役割分業を行う夫婦と子どもからなる世帯」という典型的家族が圧倒的多数である。これは若い世代の夫婦たちが望む家族である。パートの妻は増えているが、大半の労働時間が短く、子育てに支障がない働き方である。

ので、これまでのような共働き夫婦を対象にするばかりの少子化対策ではなく、典型的な家族を支える少子化対策の充実が必要だと、説いています。

 また、同棲が法的に保護されれば未婚化が解消されるという説に対しては、

 わが国の結婚は、フランスなどの法的に保護された同棲制度のような簡易な手続きで、全面的な法律的保護を与えるものになっている。わが国の未婚化は、創成が法的に保護されていないために助長されているとはいえない。

と否定しています。また、日本の夫婦が欲しい子どもの数は減っているわけでもなく、出生率の高い他国と比べても低いわけではないのに、出生率が低いことについては、

 日本の夫婦は、子育てや教育にお金がかかりすぎることなどの理由から、欲しい数だけの子ども数をもうけることを断念している人が多い。わが国の夫婦が欲しいだけ子どもを産むことができれば、わが国の少子化は和らぐ。そのための対策が必要である。

と指摘されています。そして、未婚化の主要因と指摘した雇用の劣化については、特に非正規雇用者の所得を向上させることが必要であり、両立支援については、非正規雇用者を優先的に支援していく必要があると説いています。また、第5章での分析を元に、少子化は地方においても問題となっており、しかも待機児童は少なく、女性の就業率も高いために、これまでとは異なる対応が求められている、と指摘しています。

 次に、子育て支援の方法としては、これまで現金給付よりも現物給付の方が良いと思われ、或いは現金給付に心理的な抵抗感があるようだと指摘した上で、

 わが国の少子化を克服するためには、現金給付も現物給付も両方とも拡充することが不可欠である。二者択一では、少子化対策としての効果は十分でなく、出生率は回復しない。少子化対策に取り組む諸外国においては、わが国よりも現金給付も現物給付もはるかに充実させているという実態をしっかりみるべきである。

と説いています。そして最後に、これまでのような女性の社会進出による共働き世帯への両立支援が十分でないために少子化を招いたという問題認識を改めるパラダイム転換が必要だとして、次のように説いています。

 問題認識を次のように改める必要がある。「若年層の雇用の劣化により結婚できない者が増えたこと及びマスを占める典型的家族において出産・育児が難しくなっていることがわが国の少子化の主要因である。保育所不足が育休などの両立環境が十分でないために少子化がもたらされているというのは、主に都市に住む正規雇用者同士の共働き夫婦についてである。」この問題認識をふまえて、今後少子化対策を行っていくことが期待される。

 その上で、松田氏は9つの政策提言をされていますので、是非「少子化論」を読んでみて頂きたいと思います。

 ここまでみてきました「少子化論」は、様々な角度から分析を行い、的確な問題認識であると思います。ただ、少子化の要因となる晩婚化や未婚化は以前から指摘されていたのに、それに対する有効な対策が取られてこなかったのはなぜなのか。その原因も考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 晩婚化による弊害は、最近卵子の老化という問題が取り上げられたり、妊娠適齢期の知識が乏しいことが取り上げられたりしましたが、そうした知識を正しく持ってもらうために、少子化危機突破タスクフォースが検討してきた「女性手帳」は、「妊娠や出産は女性だけの問題ではなく、女性限定で配布するのはおかしい」「出産時期など個人の人生選択に国が口を挟むべきではない」などの意見が一部からあり、頓挫してしまいました。

 その背景にあるのは、機会の均等ではなく結果の平等を求め、また、多数が望んでいる典型的家族と専業主婦を否定する間違った男女共同参画の存在があるのではないでしょうか。そこを乗り越えて今すぐにでも本当の少子化対策を実施していかなければ、間に合わないところまで来ていると感じます。


《男女共同参画に関する拙ブログの記事》
http://kodomo-hakodate.at.webry.info/theme/c002d64cbd.html


※参考文献
「少子化論」
 著者:松田茂樹、発行:勁草書房


 

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