少子化対策を考える④ ー進む未婚化ー

 前回まで松田氏の「少子化論」をご紹介しながら、我が国の家族形態が現状でも夫が仕事、妻が家庭という典型的家族が多いことや、更に家族志向が強くなっていること、そして、そうした状況で少子化を解消するためには、少数派の働く女性のための支援ではなく、大多数を占める典型的家族を支援する施策が求められることをみてきました。

 その最後で結婚していない若年の単身者が増えていることをみてみましたが、今回は「少子化論」の第二章「若年層の雇用劣化と未婚化」についてみてみたいと思います。

 松田氏は、30代前半の未婚率が1970年に男性12%、女性7%であったのが、1.57ショックの翌年1990年には男性の3人に1人、女性の1割強、2010年には男性の2人に1人、女性の3人に1人が未婚となったことを紹介して、次のように指摘されています。
 

 未婚での出産が少ないわが国では、未婚者が増えた分に反比例して出産数は減る。また、未婚率が上昇する間は出産の次期が後ろ倒しになるため、出生率は低下する。さらに、未婚化により出産する年齢が遅くなれば、身体的理由や仕事の定年までの期間などから、欲しい数の子どもを生むことが難しくなる。

 また、結婚の仕方が見合い婚から恋愛婚に変化して、結婚のハードルが高くなり、更には企業が正規雇用者や一般職の新卒採用を抑制したことなので職場結婚も減っていることを指摘しています。そして、従来は若者の9割が結婚意欲をもっているといわれていたが、最近の調査では結婚するつもりがない若者が2割を超えてきていることを紹介して、

 これまで、若者の結婚意欲が高い中で未婚化がすすんできたといわれてきた。しかし、若者たちの結婚意欲が弱まっているとしたら、わが国の未婚化は新しい段階に入ったことになる。

と指摘して、未婚化の理由については、結婚意欲が低い者の理由と、結婚意欲があっても結婚できない理由を分析する必要があるとしています。

 そして、既存の研究で出された仮説について検証し、若者における結婚・出産の価値観の低下は1990年代以降上昇している未婚化の以前からあり、近年の未婚率上昇の理由を上手く説明できず、パラサイト・シングル説も男性は過去30年間、女性は20年間大きな変化がなく、これも未婚化の一要因に過ぎないと指摘しています。

 特に、女性の社会進出と仕事と子育ての両立支援の困難による未婚化という仮説については、この20年間、保育サービスや育休などの両立支援を充実させてきたにもかかわらず、未婚化は大幅に進行したとして、

 この仮説と実態は矛盾している。また、未婚化が進行しているのは高学歴の女性や職業キャリアを築きたい女性のみではないことも、この仮説では説明できない。さらには、この仮説では、男性の未婚化や結婚意欲のことが説明できない。

と指摘されています。そして最後に若者の雇用環境について、1.57ショックの時はバブル経済期にあって就活する学生たちも企業から引く手あまただったが、その後就職氷河期が到来し、若者の雇用劣化が進んだことは、1990年代以降の未婚化の進行とも一致していることを指摘されています。

 尚、もう一つ、同棲を法的に保護すれば出産も増えるという説については、第6章で分析するとしていますが、その第6章では、わが国の結婚はフランスなどの法的に保護された同棲制度のような簡易な手続きで法律的保護を与えられているので、未婚化を助長する要因とはいえない、と指摘されています。このことについては、安宅川氏も、「家族の概念については現在の日本人の感覚に沿うものを維持することが望ましい。」と提案されて、フランスやスウェーデンで家族の概念について法的な結婚を前提としなくなったために、未婚の子が急増していることを取り上げて、「少子化対策としては成功しているかに見えるが、次世代にどのような影響を与えるかを十分に配慮すべき」と指摘されています。

 未婚率の上昇が少子化の要因であることについては、平成6年のエンゼルプランで「晩婚化の進行と夫婦の出生力の低下」を少子化の原因として挙げ、平成11年の少子化対策推進基本方針でも「晩婚化の進行等による未婚率の上昇」を原因として挙げていることを、拙ブログでもご紹介してきましたが、そうした原因分析にも関わらず、なぜか具体策は仕事と子育ての両立が中心で、ようやく平成15年の少子化社会対策基本法で「雇用環境の整備」が条文化され、子ども・子育て応援プランで「若者の自立」が掲げられて、結婚への環境整備が取り上げられました。また、平成18年の新しい少子化対策についてでは「少子化の背景にある社会意識を問い直し、家族の重要性の再認識を促」すことを明記しました。ところが、その後、少子化対策という言葉が使われなくなり、子ども・子育てビジョンとなって、また仕事と子育ての両立に戻ってしまった感もありました。

 松田氏の「少子化論」では男女共同参画という言葉ではなく、「女性の社会進出に伴う仕事と子育ての両立」という言葉で説明されていますが、男女共同参画の考え方が、少子化対策にも大きく影響しているのではないでしょうか。このことについては以前、拙ブログで取り上げてみましたので、ご参照頂ければと思います。

《ご参考》拙ブログ記事
 少子化対策
 少子化対策と男女共同参画
 


※参考文献
「少子化論」
 著者:松田茂樹、発行:勁草書房




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