函館市議会平成24年2月定例会での議論

 これまでも子ども条例に関する函館市議会での議論について取り上げてきましたが、今年の2月定例会の議事録が市のHPに掲載されましたので、その内容について見てみたいと思います。

 昨年6月の定例会では、市長が「子供の人権を尊重し、子供たちの健やかな成長を図り、幸せに暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする」「子供たちの健全育成に関するさまざまな観点から調査検討を進めて参りたい」、また、昨年9月の定例会では、市長が「市民みんなで、子供をいかにして未来に向かって希望を持って生きられるような環境を整えてあげるかということを考えるということで、私は子ども条例を提案しているわけでありまして、御指摘の権利権利だと、子供の権利だけだということで考えているわけではありませんし、場合によっては、したがって、私、権利条例という名前を使ってないわけでありますから、総合的に考えていく」と答弁されていましたが、今回はどうでしょうか。

 先ず3月2日の質疑では、権利条例を推進していると思われる市議が質問していて、その中で、函館弁護士会が立ち上げた「子どもの権利と法教育委員会」について市長の考えを質したのに対して、市長は「この委員会は、子供の最善の利益の実現などを目的としておりまして、法律家の立場で虐待あるいは不登校、障がいを抱える子供たちに関する問題に取り組まれていると認識しているところでありまして、今後の活動について私としても大いに期待を寄せている」と答えています。虐待などの問題に取り組んでいることは大変有意義なことですが、一方で日弁連は児童の権利条約第3選択議定書にも批准を推進する立場ですし、教職員に対する国歌斉唱時の起立・斉唱・伴奏を強制だと捉えて、強制することがないように要請するなどの活動も行っていて、様々な問題に対して人権という立ち位置から活動している会であることにも注目したいと思います。

 また、子ども白書の作成に協力していくべきでは、との市議の質問に対して、福祉部長は答弁の中で、子どもの権利ネットワーク南北海道の呼びかけによって子ども白書作成準備委員会が開催されたことを紹介しています。「子どもの権利ネットワーク南北海道」では、一昨年設立10周年を迎えて、堀尾輝久氏の講演会を開催されていますが、堀尾氏は子どもの権利条約を推進するDCI日本支部の副代表を務める方で、ウィキペディアでは「現代公教育を、支配者階級による被支配者階級の『教化 indoctorination』システムと定位し、近代における教育拡大を批判的に把捉した。その一方、『人権としての教育』を思想的に練磨し、その『私事の組織化=親義務の共同化』としての公教育、すなわち、その機能から『徳育 education』を排し、それを『知育 instruction』に限定される公教育モデルを提唱した」と紹介されている方です。

 先日、子どもの権利条約ネットワーク代表などを務める喜多明人氏の講演会も開催されましたが、函館弁護士会子どもの権利と法教育委員会と子どもの権利ネットワーク南北海道も後援しています。喜多氏については、拙ブログでも紹介したように、「川崎市子ども権利条例検討連絡会議」の委員や、目黒区の「子どもの条例を考える区民会議」の会長を務めて、子供の権利条例を推進してきた方ですし、健全育成を主とした浜松市子ども育成条例制定の時には、反対の立場で講演しています。

 次に、3月5日の質疑では、権利条例には反対していると思われる市議が質問しています。先ず子ども条例の調査について質問したのに対して、福祉部長が、「子供の権利保障を主な目的とするもの、子供の育成施策の推進を主な目的とするもの、そしてそれら2つの要素をあわせ持つもの」として、川崎市、調布市、目黒区を調査したことを報告しています。この3自治体の条例については4月5日の拙ブログで取り上げてみましたので、ご参照下さい。

 次に、権利条例を制定した自治体で起こった問題について情報を得ているのかという質問に対しては、「いずれの条例も、検討委員会におきまして、子供の権利をめぐる意見が議論の大きなポイントとなっておりまして、本市におきましても、さまざまな立場から充分な議論をいただいた上で、条例に盛り込むべき内容等について検討を重ねていく必要があろうと、このように考えている」と答弁して、具体的な問題については言及しませんでしたので、市議の方から「市長から、権利権利とそういうものではないと、あくまで子供たちの健全な未来にとって必要なものをつくり上げるもので、名前にも権利なんて入れてない」という答弁をされたことを紹介した上で、権利の濫用や教育現場での問題について説明がありました。

 最後に、検討委員会の設置について質問があり、「学識経験者や公募の市民等により構成をいたします(仮称)子供条例検討委員会を設置いたしまして、条例に盛り込むべき内容等について御議論をいただくとともに、検討委員会の意向も踏まえた上でアンケート調査の実施や検討委員会と各種団体との懇談など、広く市民の意見を聴取し反映することができるよう条例に向けた検討を進めてまいりたい」として「具体的なメンバー等についてはこれからまた検討詰めてまいりたい」と答弁されています。

 こうした検討委員会の学識経験者には、往往にして推進する立場の先生が選任される場合がありますので、推進する立場と反対する立場の双方の学識経験者を選考して欲しいと思いますし、子供の育成にかかわっている団体も明らかに権利条例を推進する立場の団体ではなく、様々な立場の団体を選考して頂きたいと思います。また、今回の質疑を見てもわかりますように、市長が権利条例をいう名前を使っていないと言われても、結局は子どもの権利を条例に盛り込むのかどうかが焦点となると思いますので、今後、検討委員会がどのようなメンバーで構成され、どのような議論が行われていくのか注視していきたいと思います。


■平成24年第1回2月定例会

○3月2日
(質問者:市議)
(前略)5点目、子供に関する条例について質問いたしますが、函館市は(仮称)子ども条例を策定するという目的で、昨年、先進地に調査に出向いていると思います。その調査内容と分析を踏まえて、当市において子供に関する条例を策定する意義をどのようにとらえているのか伺います。

(福祉部長)
 条例策定の意義についてのお尋ねでございます。
 既に他都市において制定されております子供に関する条例は、その内容も多岐にわたりますことから、制定済みの都市28市に対しまして文書による照会を行うとともに、川崎市、調布市、目黒区には訪問による聞き取りも行い、策定体制などについて調査を行ってきたところでございます。他都市においては、条例の策定に当たってはさまざまな立場からの意見が寄せられたとお聞きをしており、本市においては地域全体で子供たちの成長を支えることができる社会の実現のために、子供たちの成長をみんなで支えていくことへの根拠を明示し、子供にかかわる各種取り組みを推進するための柱となる条例を制定すること自体の意義に加えまして、その策定過程において積極的な市民参画を得て多様な立場から御議論をいただくことにより、子供を取り巻く課題等の洗い出しや子供にかかわる関係者のネットワークの強化、さらには地域で子育て、子供を支えていこうという機運の醸成といった効果も期待をしているところでございます。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。
 昨年11月に函館弁護士会が、子供たちが一人の人間として基本的人権を持って権利を実現していくために法律家としての取り組みを行いたいという、そういう目的で子どもの権利と法教育委員会を立ち上げました。私もその設立の記念講演に参加しました。この議場の中の議員さんの中にも参加した方もいらっしゃいます。
 市長に伺います。
 法律の専門家の弁護士の皆さんがこのような取り組みを始めたということに対してどのようにお考えかを伺います。

(市長)
 函館弁護士会の子どもの権利と法教育委員会でありますが、函館弁護士会が日本弁護士連合会の承認を得て設立した組織でありまして、昨年の11月に開催された設立記念集会の開催に当たっては、函館市も後援者に名を連ねたところであります。この委員会は、子供の最善の利益の実現などを目的としておりまして、法律家の立場で虐待あるいは不登校、障がいを抱える子供たちに関する問題に取り組まれていると認識しているところでありまして、今後の活動について私としても大いに期待を寄せているところであります。

(質問者:市議)
 私も弁護士の先生方がこのような会を設立して、本当に心強いなというふうに思っております。
 それで、ことしの2月に函館市内の子供に関する団体などで、さまざまな角度で、さまざまな視点で市内の子供たちの実態を知ろう、実態把握をしようという目的で、子ども白書の作成を準備中です。私は、行政としても子供の実態を把握することが重要であるし、ぜひ協力していくべきと考えますが、いかがでしょうか。

(福祉部長)
 子ども白書作成への協力についてのお尋ねでございます。
 本年2月9日に地域交流まちづくりセンターにおきまして子どもの権利ネットワーク南北海道の呼びかけにより、子供にかかわる団体関係者などによる第1回目の子ども白書作成準備委員会が開催をされまして、今月9日には2回目の準備会も開催されるというふうにお聞きをしております。日ごろから子供たちにかかわる活動をされている方々の手によりまして地域の子供たちの実態等をまとめた子ども白書をつくり上げられることは非常に意義深いものであると考えておりますので、市といたしましても行政として保有している子供にかかわる各種指標や調査結果等のデータの提供を初めまして、各団体の照会など協力可能なものがあれば協力をしてまいりたいと考えております。

(質問者:市議)
 ぜひ協力していただきたいというふうに思います。
 私は、子供に関する条例を制定する過程の中で、やはり検討委員会をしっかり立ち上げてほしいということをるる述べてきたつもりでおります。新年度に検討委員会を立ち上げるという予算がついておりますけれども、どのようなメンバーで考えているのか伺います。

(福祉部長)
 検討委員会の構成メンバーについてのお尋ねでございます。
 現在、約10名程度による検討委員会を設置してまいりたいと考えておりますけれども、子供に関する条例に対しましてはさまざまな声がありますことから、その構成についても学識経験者や子供の育成にかかわっている団体等の関係者、さらには一般市民の方などに参画をいただきながら多様な視点からの御議論をいただきたいと、このように考えております。


○3月5日
(質問者:市議)
(前略)
 私、議員になる前から、教育、また社会を強く生き抜いていくための子供のころのしつけというものをすごく大事にしているものですから、この子供、俗に言う権利条例というのが日本の全国で策定されながら、どのような影響を及ぼしてきたのかというところにも注目しておりました。その中で、議員になりまして一番最初に補正予算の中で目についたのが、こちらの条例であります。
 早速ですが、質問に入らせていただきたく思います。
 (仮称)子ども条例、平成23年の補正予算に20万円の調査費がついておりました。その調査についての報告をまず受けたいと思います。よろしくお願いいたします。

(福祉部長)
 (仮称)子ども条例の調査、この調査都市についてのお尋ねでございます。
 本市における条例制定に向けた検討の参考とするために、昨年11月に川崎市、調布市、及び目黒区を訪問して調査を実施したところでございますが、子供に関する条例は、その盛り込まれる施策や子供に対する視点の違いなど、その内容も多岐にわたりますことから、さまざまな観点での調査検討を可能とするため、いわゆる子どもの権利条例に限定することなく、既に条例制定済みの都市28市を対象として文書調査を行いまして、その結果を踏まえて選定したものでございます。
 その選定に当たりましては、各都市の条例の目的から子供の権利保障を主な目的とするもの、子供の育成施策の推進を主な目的とするもの、そしてそれら2つの要素をあわせ持つものの3つに類型化をいたしまして、それぞれの特徴等の比較もできるよう川崎市、調布市、目黒区を対象としたものでございます。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。
 その調査の内容をお伺いする前に、ちょっとお伺いしたいんですけれども、ただいま御答弁の中にありました条例を既に制定済みの都市28市を対象に文書調査を、どこの都市に調査をしに行けばいいのかというところで、28市の中から選んだという話なんですけれども、この文書調査というものは、函館市の側から何かしら質問を投げかけて、アクションをかけて、そのリアクションを28都市全部から受けての調査なのか、もしくは函館市の側が、例えばウエブサイトなどで、ここの都市はこういうふうにやっているのかと、一方的に恐らくこうじゃないかという推測のもとで選んだ3都市なのかどうかをお知らせください。

(福祉部長)
 この文書調査の内容等についてのお尋ねでございます。
 訪問調査の実施都市の選考を初め、今後の条例制定に向けた検討の参考とするため、既に子供に関する条例を制定している都市28市に調査票を送付いたしまして、回答を依頼したものでございます。
 具体的な調査項目といたしましては、制定を検討することとした背景ですとか、制定までに要した期間、検討委員会等の状況など、制定に至るまでの取り組みの状況に加えまして、条例制定による効果ですとか、制定を契機とした新規施策など、その制定後の状況についても調査をしたところでございます。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。
 私、以前定例会、議会の中で質問をさせていただいたときに、その23年度の補正でつきました調査費で調査する対象の中に、全国で、先ほどさまざまな意見といいますか事態が起こっている中で、あくまで函館市は子ども条例という仮称ですけれども、俗にいう子ども権利条例というものを制定した都市の中には、それがいろいろな問題を起こす、あるいはそれを検討する段階にあって条例案の廃止に追い込まれた、あるいは制定した後に全面廃止の請願などが出ている、そういうところも調査していただけたらなという要望を申し上げたんですけれども、先ほどお伺いしました内容には、制定の主な目的の違いによって3都市を選んだと。子供の権利保障を主な目的とするもの、子供の育成施策の推進を主な目的とするもの、またその両方をあわせ持つものとありましたが、そのトラブルといいますか、いろいろ物議を醸した都市の情報というのは得られていますでしょうか。お願いいたします。

(福祉部長)
 先ほど申し上げました3つの自治体の中で、子供の権利保障を主な目的とするものというところで、川崎市がその都市でありますけれども、今回の調査、その川崎市を含む調布市、目黒区のこの条例の所管部局を訪問いたしまして、さきに実施をいたしました文書調査の結果も踏まえ、条例制定に至る経過ですとか検討委員会の体制、子供の意見の反映方法などの制定に向けた取り組み、また制定後の効果、課題などについて聞き取り調査を行ったところでございます。
 いずれの条例も、検討委員会におきまして、特に議員御指摘の子供の権利をめぐる意見が議論の大きなポイントとなっておりまして、本市におきましても、さまざまな立場から十分な議論をいただいた上で、条例に盛り込むべき内容等について検討を重ねていく必要があろうと、このように考えているところでございます。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、今お伺いしました話ですと、条例所管の部署について問い合わせ、あるいは調査等をさせてもらったということだったんですけれども、教育の現場の方の声とか、そういうものは拾い上げてはいらっしゃらないんでしょうか。

(福祉部長)
 訪問調査へ行った部署については、それぞれの条例を所管する、例えば福祉部ですとか、子供関係部局ですとかということで、その中で教育に関する、直接お伺いしたわけではないですけども、そうした議論についても確認はさせていただいているところでございます。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。
 先ほどの御答弁にもありましたとおり、この条例について何が物議を──物議といいますか、賛否を巻き起こしているかといいますと、権利条項を含むかどうかというところなんですね。私は前回、そのさらに前の議会でやって、余りにも私が権利権利言うものですから、市長から、権利権利とそういうものではないと、あくまで子供たちの健全な未来にとって必要なものをつくり上げるもので、名前にも権利なんて入れてないじゃないかと、私ちょっと熱くなり過ぎてやったところでいさめるように御答弁いただいたわけですけれども、先ほども申しましたとおり今までの前例、兵庫県を皮切り、あと神奈川県ですか、を皮切りにしまして制定が始まってきたわけですけれども、それらの都市において子供たちの安全、未来を守るというのは、実に私も賛同して、子供の条例という、環境を守るという点ではすごく大事なものだと思っています。
 ただ、そこに大人の意図が入りますと、権利の濫用だとか、あと埼玉県所沢市にありましたように、意図的な解釈を使って教育の現場を乱すような、教職員者の方々がいろいろ苦労するような事態も出てきております。私、以前もお話し申し上げましたように社会を支えていくには、しっかりと自分自身の利己的な部分ではなく、しつけを大人から施してもらって社会の公共性などに配慮できる子供が育たなければ、これからのまちというのはないなと思っております。
 今回の予算についたものですけれども、新たに59万1,000円が計上されています。その横に説明書きとしまして、子ども条例検討関係経費となっているんですけれども、この予算を使用しての今後の流れを教えていただきたいと思います。

(福祉部長)
 今後の進め方についてのお尋ねでございます。
 (仮称)子ども条例は、地域全体が喜びを持って子供たちの成長を支えることができる地域社会の実現を図ることを目的としておりますことから、できるだけ多くの市民の皆様の合意のもとで制定される必要があると、このように考えております。
 24年度におきましては、学識経験者や公募の市民等により構成をいたします(仮称)子ども条例検討委員会を設置いたしまして、条例に盛り込むべき内容等について御議論をいただくとともに、検討委員会の意向も踏まえた上でアンケート調査の実施や検討委員会と各種団体との懇談など、広く市民の意見を聴取し反映することができるよう条例に向けた検討を進めてまいりたいと、このように考えております。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。ことしの24年度の予算での使途予定はそのような感じですね。
 これから検討委員会が開かれるということなんですけれども、もし決まってればでいいんですけれども、この検討委員会の構成メンバー、あと公募の応募が規定数の枠を超えた場合の選考方法、あと応募資格、あと公募の時期がいつごろになるのかなど、もし決まっていることがありましたら教えていただきたいと思います。決まっていなければ大丈夫です。

(福祉部長) 検討委員会につきましては、さまざまな意見をお聞きするという必要があるということで、学識経験者、公募等の市民等により構成するということは予定しておりますけれども、具体的なメンバー等についてはこれからまた検討詰めてまいりたいと、このように考えております。
 以上でございます。

(質問者:市議)
 ありがとうございます。
 私が先ほど申しましたとおり、以前質問の中で市長からこういうお言葉をいただきました、答弁で。子供たちがどんな環境で、あるいは家庭にあっても、やっぱりきちっと希望を持って生きていただく、いける、そういう環境をつくり出していく。私も、こちらには大いに賛同しております。先ほど、私が権利権利、権利権利と言ったがために、そういうものではないというふうに御答弁いただいたのも覚えております。
 権利の濫用とかにはつながらないものができ上がるのではないかと思ってはおりますが、検討委員会、あらゆる方々の意見をもとに収集してつくり上げていくものですので、市長お一人の御意見でつくり上げていけるものではないので、私もいろいろ注意しながら見守っていかせていただきたいと思います。このまちを支えていく人材を力強く育てていきたいなという思いであります。(後略)



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