子どもの権利条例の問題点②

 子どもの権利条例の問題点の2つめは、その元とされている国連の児童の権利に関する条約の中に、オートノミーの権利と呼ばれる自己決定権が盛り込まれたことです。問題点①でも述べたように、条約の主たる目的は開発途上国における子どもの人権環境を改善することにあり、家族を社会の基礎的な単位として、子供を保護・援助されるべきものとして捉えているのですが、そうした条約の中に、保護育成される権利ではない、子供を大人と同じように権利の主体として、自分で決定する権利が盛り込まれています。

 児童の権利条約に、このようなオートノミーの権利が盛り込まれた経緯については、日本政策研究センターのブックレット「危ない『条例』あなたの町は大丈夫か?」をご覧頂きたいと思いますが、ここでは、条約の条文について見ていきたいと思います。

 具体的にオートノミーの権利が規定されている条文は第12条から第16条で、それぞれ次のような権利を規定しています。

 第12条 意見を表明する権利
 第13条 表現の自由についての権利
 第14条 思想、良心及び宗教の自由についての権利
 第15条 結社の自由及び平和的な集会の自由についての権利
 第16条 プライバシー・名誉の保護

 実際の条文は次のように政府が翻訳していますが、下線を引いた(下線は筆者)部分をご覧頂ければわかるように、オートノミーの権利を規定したとはいえ、それぞれに制限を付しています。

第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

第13条
1 児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
2 1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護


第14条
1 締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
2 締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務を尊重する
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる

第15条
1 締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める。
2 1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない

第16条
1 いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
2 児童は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。


 また、以前にもご紹介しましたが、日本国憲法には次の条文があって、権利を濫用してはならず、公共の福祉のために行使することを定めています。

第一二条 この憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第一三条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


 このように、児童の権利条約にも問題がありますが、それでも権利の行使には一定の制限が設けられているのに、問題点①で見たように、各地の子どもの権利条例には、その制限がないのです。
 また、このようなオートノミーの権利、自己決定の権利を、子どもの権利条例推進派が殊更強調しているのは、以前ご紹介した生徒人権手帳に掲げられている「遅刻をしても授業を受ける権利」「飲酒・喫煙を理由に処分を受けない権利」「セックスするかしないかを自分で決める権利」「子供を産むか産まないかを決めるのは女性自身の権利」「日の丸・君が代・元号を拒否する権利」などを見てもわかります。


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