条約の批准と委員会見解(勧告)の履行義務

 国連の児童の権利委員会については、これまでにも、報告書を作成する段階での不可解な意見交換会の様子や、委員会の最終見解が一度出された後に内容が替えられたことをお伝えしてきました。その記事でも簡単にお伝えしましたが、児童の権利に関する条約を始めとする国連の人権条約にはそれぞれ委員会が設置され、条約の履行について締約国から報告を受け、それを審査して見解(勧告)を出すことになっています。

 その報告書を作成するにあたって外務省主催の意見交換会が実施されたこともお伝えしましたが、児童の権利委員会を始めとする国連の各権利委員会が審査するのは政府の報告書だけではありません。政府の報告の他にNGOなどのレポートも審査の対象としていて、我が国のNGOも熱心にレポートを提出したり、国連の委員会まで出向いて視察したりしています。そうしたNGOが権利委員会の勧告を持ち出して子どもの権利条例の制定を推進しています。

 つまり、NGOの意見が国連の権利委員会で取り入れられて勧告が出され、その勧告をNGOが受け入れさせようとしている、という構図があるわけです。国が条約批准にあたって立法措置は必要ないとしているのに、その頭越しに条例を制定しようと国連の勧告を持ち出すのは、こうした背景があります。

 それでは、こうした児童の権利委員会の勧告を受け入れる必要はあるのでしょうか。実は、条約は批准していますので履行義務がありますが、委員会の勧告については履行義務はない、と閣議決定されています。

 谷岡郁子参議委員議員の質問主意書に対して、平成21年1月13日に麻生総理大臣名で答弁書が出されていますが、その中で、

「御指摘の勧告は、法的拘束力を持つものではなく、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の締約国に対し、当該勧告に従うことを義務付けているものではないと理解している。」

と答えています。また、このことについて、山谷えり子参議院議員が今年10月19日に提出した「第三次男女共同参画基本計画に関する質問主意書」の中で履行義務の有無を確認されていますが、その答弁書でも

「御指摘の『履行義務がある』との記述は、御指摘の『女子差別撤廃委員会の最終見解』について述べているものではなく、女子に対するあらゆる形態の差別の撤退に関する条約(昭和六十年条約第七号)等我が国が締結国である国際約束を念頭に置いて述べたものである。なお、御指摘の『女子差別撤廃委員会の最終見解』については、法的拘束を有するものではないと理解している。」

と答弁されており、批准している条約そのものには履行義務があるが、委員会の最終見解(勧告)については法的拘束を有するものではない、としています。条約は兎も角も、問題の多い勧告については履行義務はないのです。

 ついでに言えば、条約そのものも問題がないわけではなく、批准するにあたって、留保や解釈宣言をしている国もありますし、アメリカは批准すらしていませんが、そのことについては、また別の機会にお伝えしたいと思います。

この記事へのコメント

ジャルおじさん
2010年11月28日 14:28
何も知らなかった私ですが驚いております
考えさせられる事が多く、大変役に立っています。
落蹲
2010年11月28日 16:56
ジャルおじさんさん、コメントを頂き有り難うございます(初めてのコメントで、喜んでおります)。微力ですが、函館で危ない子どもの権利条例が制定されないよう頑張りたいと思いますので、宜しくお願い申し上げます。

推進派は、今日も↓のような講演会を開催しています。講師がどのような思想の方かは、ちょっと検索すればすぐわかるのですが、行政が後援しているのは残念に思います。
http://www.hakomachi.com/townnews/2010/10/post-250.html

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