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zoom RSS 非嫡出子の相続に関する民法の規定の合憲性

<<   作成日時 : 2011/10/16 15:38   >>

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 非嫡出子の遺産相続を嫡出子の半分と定めた民法第900条第4項の規定について、今年8月に大阪高裁が、憲法第14条第1項が定めた法の下の平等に違反し無効との判決を下していた、というニュースがありました。

◇婚外子の相続差別 違憲…大阪高裁決定 (読売新聞 平成23年10月4日)

 法的に未婚の男女間の子(婚外子=非嫡出子)の遺産相続は、夫婦間の子(嫡出子)の半分とした民法の規定について、大阪高裁(赤西芳文裁判長)が、遺産分割を巡る家事審判の抗告審で、「法の下の平等を定めた憲法に違反し無効」との決定を出し、確定していたことがわかった。

 最高裁は1995年の決定でこの規定を「合憲」としており、非嫡出子側の弁護団によると、95年以降に高裁が違憲判断をしたのは初めて。

 弁護団の大谷智恵弁護士(大阪弁護士会)によると、この家事審判は、2008年に死亡した大阪府の男性の遺産を巡る争いで、男性の妻と、嫡出子3人、非嫡出子1人が当事者。大阪家裁は今年4月、民法の規定に沿った遺産分割を命じ、非嫡出子側が不服として、大阪高裁に抗告した。

 同高裁の8月24日付の決定は、この規定について、「法律が非嫡出子を嫡出子より劣る地位に置くことを認めれば、差別を助長しかねない」と指摘。95年の最高裁決定後、婚姻や家族の在り方が変化し、国民の意識も多様化したとして、「嫡出子と非嫡出子の区別を放置することは、立法府の合理的な裁量の限界を超えている」と結論付け、嫡出子と非嫡出子の相続割合を同等とした。

 この規定を巡っては昨年7月、別の家事審判の特別抗告審が最高裁大法廷で審理されることが決まり、合憲判断が見直される可能性があったが、裁判外で和解が成立し、終結していた。


 非嫡出子の相続を嫡出子の2分の1とする民法の規定については、国連の児童の権利委員会や女子差別撤廃委員会から改善の勧告を受けていることや、各人権条約の個人通報制度を規定した選択議定書に批准した場合に我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあることについて、拙ブログでも紹介してきましたが、現在のところ民法の規定を合憲だとする判断基準となっている平成7年の最高裁大法廷の判断を見てみたいと思います。

 平成7年の最高裁大法廷では、法の下の平等について、

「憲法一四条一項は法の下の平等を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではない。」

として、民法で定める相続制度について、

「民法は、社会情勢の変化等に応じて改正され、また、被相続人の財産の承継につき多角的に定めを置いているのであって、本件規定を含む民法九〇〇条の法定相続分の定めはその一つにすぎず、法定相続分のとおりに相続が行われなければならない旨を定めたものではない。すなわち、被相続人は、法定相続分の定めにかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定めることができる。また、相続を希望しない相続人は、その放棄をすることができる。さらに、共同相続人の間で遺産分割の協議がされる場合、……。もっとも、遺産分割の協議が調わず、家庭裁判所がその審判をする場合には、法定相続分に従って遺産の分割をしなければならない。
 このように、法定相続分の定めは、遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて、補充的に機能する規定である。」


として補充的な規定であるとして、相続ということについては、

「相続制度は、被相続人の財産を誰に、どのように承継させるかを定めるものであるが、その形態には歴史的、社会的にみて種々のものがあり、また、相続制度を定めるに当たっては、それぞれの国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならず、各国の相続制度は、多かれ少なかれ、これらの事情、要素を反映している。さらに、現在の相続制度は、家族というものをどのように考えるかということと密接に関係しているのであって、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律等を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で、相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断にゆだねられているものというほかない。」

とした上で、

「嫡出子と非嫡出子の法定相続分の区別は、その立法理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が右立法理由との関連で著しく不合理なものでなく、いまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的理由のない差別とはいえず、これを憲法一四条一項に反するものということはできないというべきである。」

としています。さらに憲法第24条との関係については、

「憲法二四条一項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する旨を定めるところ、民法七三九条一項は、……いわゆる事実婚主義を排して法律婚主義を採用し、また、同法七三二条は、重婚を禁止し、いわゆる一夫一婦制を採用することを明らかにしているが、民法が採用するこれらの制度は憲法の右規定に反するものでないことはいうまでもない。」

として、嫡出子と非嫡出子との区別について

「民法が法律婚主義を採用した結果として、婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生じ、親子関係の成立などにつき異なった規律がされ、また、内縁の配偶者には他方の配偶者の相続が認められないなどの差異が生じても、それはやむを得ないところといわなければならない。」

とした上で、規定の立法理由について

「本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。これを言い換えれば、民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものであると解される。」

としました。そして、

「現行民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法一四条一項に反するものとはいえない。論旨は採用することができない。」

と結論づけています。(ただし、15人中5人の裁判官が反対意見を述べ、また合憲とする意見の中でも複数の補足意見が付されています)

 この問題は、平成7年の最高裁大法廷の合憲判決以降、小法廷でも5回にわたって合憲判決が出ていますが、それぞれ反対意見や立法による解決を求める補足意見等が付けられていて、非常に難しい問題であることがわかります。また、平成20年には、最高裁大法廷が、日本国民との間に親子関係をあるにもかかわらず、両親が法律上婚姻していない非嫡出子のみが国籍を取得できないとする国籍法の規定を違憲であるとの判断を下したこともありましたし、また、新聞記事にもあるように昨年7月に最高裁小法廷が憲法判断を大法廷に回付したこともあり、次に最高裁大法廷がどのような判断を下すのかが注目されています。

 また、この問題は民法における嫡出子と非嫡出子との区別に係わる問題ですが、平成7年の最高裁大法廷の判決でもみられるように、日本の社会や国民が家族をどのように捉えているか、それを明文化した民法が家族や結婚をどのように規定しているかという問題で、相続問題のみならず、拙ブログでも取り上げてきました夫婦別姓などとも関係してきますし、家族のあり方という点では、最近話題になりました専業主婦の年金問題とも関係していると思います。

 専業主婦の年金問題についてはブログ「家族を守ろう!『なでしこ日本』」さんが取り上げていらっしゃいますので、ご参照下さい。
 

 主婦年金見直しへ
 

 どうなる?専業主婦の年金保険料
 

 また、以前にもご紹介しましたが、高市早苗議員のコラム「民法&戸籍法改悪シリーズ」も是非ご覧頂きたいと思います。

 民法&戸籍法改悪阻止シリーズA:婚外子と実子の相続権同一化に疑問
 

 民法&戸籍法改悪阻止シリーズB:民主党のホンネは戸籍制度の廃止

 
 家族を守るとともに、非嫡出子の利益も守るという観点から、平成7年の最高裁大法廷での「法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。」という解釈はバランスのとれたものだと思います。また、平成18年に内閣府が実施した家族の法制に関する世論調査でも、

「夫婦の一方が夫以外の男性又は妻以外の女性との間に子どもをもうけた場合でも,その子どもについて,法律制度の面で不利益な取扱いをしてはならないという考え方があるが,この考え方について,どのように思うか聞いたところ,『配偶者以外の異性との間に生まれた子どもであっても,生まれてきた子どもに責任はないのだから,そのことだけで子どもについて不利益な取扱いをしてはならない』と答えた者の割合が58.3%,『正式な婚姻をした夫婦が配偶者以外の異性との間に子どもをもうけることはよくないことをはっきりさせて正式な婚姻を保護すべきであり,そのためには,配偶者以外の異性との間に生まれてくる子どもについて,ある面において不利益な取扱いをすることがあってもやむを得ない』と答えた者の割合が18.5%,『どちらともいえない』と答えた者の割合が21.0%となっている」

のに対して、

「嫡出でない子が相続できる金額は,嫡出である子の2分の1とされているが,このような制度について,どのように考えるか聞いたところ,『現在の制度を変えない方がよい』と答えた者の割合が41.1%,『相続できる金額を同じにすべきである』と答えた者の割合が24.5%,『どちらともいえない』と答えた者の割合が31.2%となっている。」
 

ことからも、国民の意識も非嫡出子に不利益な取り扱いをしてはならないとする一方、相続に関する区別は現行のままで良いと考えていることがわかります。



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